青茶:台湾地区

経済の発展と共に製茶技術が進歩し、茶藝文化が登場するなど、幅広く中国茶に影響を与えた地区と言えます。 凍頂烏龍茶や高山烏龍茶(阿里山烏龍茶)などのほか、特殊な製法の東方美人や伝統的製法の木柵鉄観音、各地で盛んに行われるコンクール茶など、お茶の種類は非常に豊富です。

凍頂烏龍茶

トウチョウウーロンチャ
産地:台湾南投県鹿谷郷
台湾中部に位置する南投県鹿谷郷で作られる、台湾を代表する烏龍茶が凍頂烏龍茶です。緑がかった黄金色の水色とまろやかな味わい、花のような甘い香りが特長。 約150年前の清代、林鳳池という人物が科挙に合格した記念として福建省から持ち帰り、鹿谷に植えた12本の茶樹が凍頂烏龍茶の起源と言われています。 凍頂烏龍茶に使われる主な茶葉は「青心烏龍茶」という品種です。

四季春

シキハル
産地:台湾南投県など
どの季節に摘まれたお茶でも春一番の新茶のような華やかさを持つことから「四季春」と名付けられた品種です。香り高く、繊細ながらも芯のある味わいが魅力で、その風味は口の中で余韻として長く残ります。 約10年ほど前、鉄観音で有名な木柵地区で自然交配によって誕生した品種で、武夷種と青心烏龍茶、または青心ターパン種がかけあわさったと言われています。

金萱茶

キンセンチャ
産地:台湾南投県など
バニラのような甘い香りが際立ちます。 すっきりとした飲み口が心地よく、甘い香りとのハーモニーが人気です。 民国70年(1981年)に茶業改良場で開発された品種で、別名「台茶12號」とも。 金色の湯色(ゆしょく)が特長で甘い香りがすることから、この名前がつけられました(“萱”とは甘草の意)。この兄弟品種が「台茶13號」の翠玉茶になります。

翠玉茶

スイギョクチャ
産地:台湾南投県など
とろみのある濃厚な味わいと青々とした玉を思わせる凛とした香りが個性的です。香りは落ち着いていますが、風味豊かで深みのある味わいはどこか玉露を感じさせます。 民国70年(1981年)に茶業改良場で開発された品種で、別名「台茶13號」とも。 翡翠を思わせる深い緑色の茶葉と玉石を感じさせる青々とした湯色、ということでこの名前がつけられました。

文山包種茶

ブンザンホウシュチャ
産地:台湾文山地区(台北県坪林郷など)
文山地区で作られるこのお茶は揉捻が弱く、発酵度もまた低いため、緑茶に似た性格を持った烏龍茶です。すがすがしい香りと繊細な味わいは他の烏龍茶には見られない特長で、台湾では「清茶」と呼ばれ親しまれています。 品種は「青心烏龍茶」を使う場合がほとんどですが、農家により他品種(四季春や翠玉など)を使うこともあるようです。

東方美人

トウホウビジン
産地:台湾桃園県、新竹県、苗栗県など
東方美人は台湾でのみ生産されているお茶です。別名、香檳烏龍茶・白毫烏龍茶・膨風茶とも呼ばれ、さらに紅茶の世界では「フォルモサウーロン」「オリエンタルビューティー」の名を持っています。発酵度が高く、フルーティーで蜂蜜のような甘い香りで、紅茶のような味わいと烏龍茶としての風味を併せ持った、個性のあるお茶です。 このお茶最大の特徴はお茶の害虫であるチャノウンカに新芽を吸汁させ、虫の分泌液の影響により強い香気を持たせるという独特の製法で生まれた味わいにあります。もちろん茶園はウンカを呼び込むために完全無農薬でなければなりません。 この茶葉は台湾でウンカが大発生するアクシデントがきっかけとなり発見された、いわば逆転の発想とも言える製法で生み出されたものです。 一年に一回、ウンカ発生時期にしか作られない、大変貴重なお茶で茶摘みから製造までの工程が非常に複雑なため、時代と共に生産量が減ってきていますが、台湾を代表する、最も歴史の長い銘茶として誇り高いお茶です。主な品種は「青心ターパン」と呼ばれる品種茶ですが、他の青心烏龍茶や金萱などの品種でも作ることができます。(当然風味が変わります。)

阿里山烏龍茶

アリサンウーロンチャ
産地:台湾嘉義県阿里山地区
標高1,000m以上の茶園で生産され、高山烏龍茶と呼ばれる品質の高いお茶の中でも、特に評価、知名度ともに高いのが阿里山で作られた烏龍茶です。繊細かつ存在感あふれるまろやかな甘い香りとさっぱりしていつつも深みのある味わいがこのお茶の醍醐味です。 手摘み茶ならではの茶葉の大きさと、丁寧に揉み固められた粒の艶やかさがこのお茶の品質を保証しています。台湾で開発された製茶技術の随を集めた結晶といっても過言ではありません。 この名前で売られるお茶は基本的には「青心烏龍茶」の品種茶を使っていますが、まれに他の品種を使ったお茶も売られているようです。

木柵鉄観音

モクサクテッカンノン
産地:台湾木柵地区(台北県南部)
鉄観音の故郷、福建省から渡来した製法によって台湾で作られた鉄観音がこのお茶です。品種、製法、焙煎などすべて伝統に従って熟練の職人が作りました。 匠の焙煎によって引き出されたふくよかな香ばしい香りと豊かな余韻の残る味わいが台湾の木柵鉄観音ならではのもの。 製造には伝統的な手法を用い、製茶に長い時間を費やすため、今では生産量も少なくなり、希少価値の高いお茶です。

紅烏龍茶

アカウーロンチャ
産地:台湾新竹県、苗栗県など
台湾西部で作られるお茶です。 発酵度が普通の烏龍茶よりも高いため、紅茶のような風味と烏龍茶独特の焙煎香が混じり合う、やわらかくて香ばしい味わいが特徴です。紅茶のような色合いですが、渋みも少なくまろやかな風味が好まれています。 春の後半から夏にかけて採れる茶葉を主な原料にしています。 品種は青心烏龍茶や青心ターパンなどが使われます。